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第2章 家庭・地域の教育力の向上

1  現状と課題

近年、核家族化、少子化等の社会の変化や地縁的なつながりの希薄化に伴い、家庭の教育力の低下が指摘されている。この影響としては、子どもの生活リズムの乱れ、少年犯罪の多発や低年齢化、幼児・児童虐待の増加等が挙げられる。また、個人の考え方も多様化し、自治会等への加入率低下や地域活動への参加者の減少等、住民意識の低下や地域コミュニティの衰退がみられる。

本県においても、児童虐待に関する相談件数が年々増加傾向にあり、その相談内容も育児怠慢、放棄が最も多いことから、本来子どもが人として健全に育てられるべき家庭における教育力の低下が窺われる。

さらに、県民意識調査によると、親も地域の大人も現在の教育が抱える課題として、「家庭のしつけや教育」「礼儀正しさ、社会的マナー」「他者に対する関心や愛着」「地域社会と子どもの関わり」等が不足していることを挙げている。

こうしたことから、家庭の教育力を高めるため、親の学ぶ機会や子育てしやすい環境を整備すること等が求められる。

一方、地域においては、住民同士の連帯感の希薄化により地域コミュニティが衰退の傾向にある。その結果、地域での異年齢間の子どもの遊びや地域行事への参加が少なくなっており、地域コミュニティの再生や体験活動の充実などが求められている。

地域コミュニティ
地域住民が自主的に参加し、その総意と協力により、住みよい地域社会をつくることを目的に構成された集団社会

2  求められる方策

家庭の教育力を高めるために

(1)  学習機会の提供

家庭の教育力を高めるためには、「親になるための学び」と「親としての育ち」の支援を行うことが必要である。

その支援の対象は、学習を希望する親だけではなく、周囲の支えをより必要としている親、例えば一人で子育ての悩みを抱え込み孤立している親、子育てに無関心な親、仕事と子育てを一人で担っている親等幅広く設定すべきである。

そのため、家庭教育支援を「学習を希望する親の学習支援」から「全ての親の子育てを支援するための学習支援」と捉え直し、これまで手の届きにくかった親へのアプローチも含め、全ての親を対象として学習機会を提供することが必要である。

近年、子どもや大人が身近で乳幼児とふれ合う機会が減少しており、乳幼児期の実態が理解しにくい状況にある。そこで、「親になるための学び」支援として、特に中高校生等の若い世代が乳幼児とふれ合う機会を積極的に提供し、子育てについての学びを支援することが必要である。

さらに、「親としての育ち」の支援として、子をもつ親に我が子への関わりや接し方についての学びの場を提供し、親としての自覚や責任を持たせるとともに、育てる喜びを実感する機会を提供することも重要である。

活動の例
「10代のベビーシッターボランティア養成講座」:宮崎市
NPO法人に委託し、県内の高校生を対象に、ベビーシッターの技術を学び命を育む大変さや楽しさ等を実感し親になることへのイメージを持たせる

(2)  家庭教育支援のための環境整備

今日の家庭の教育力低下の要因としては、親の問題とともに、地域全体として親の「学び」や「育ち」を支える環境が壊れてきていることが挙げられる。

そこで、子どもたちの健全育成に向けて、地域の公民館活動や家庭教育学級の機会等を利用して、子育てに対する不安や悩みを解消するための相談体制の整備や、同じ思いを抱える親同士が気軽に交流し、情報交換を行う場を提供するなど、家庭教育支援のための環境整備を一層進めることが重要である。

また、仕事を持つ親が安心して子育てができるように、企業等に子育てへの配慮を促すことも必要である。

活動の例
みんなで子育て応援運動:県福祉保健部児童家庭課
宮崎県次世代育成支援対策推進協議会と本県が、子育てに安心と喜びが広がる社会作りをめざす事業で、「子育て応援宣言」「仕事と家庭の両立応援宣言」「子育て応援サービス」などの取組がある。

(3)  関係団体等との連携

子育てサークルや子育てネットワーク、NPO法人、社会教育関係団体等の様々な団体が県内各地で家庭教育の支援活動を行っている。

これらの団体は、親に対して子どもとの関わり方やしつけについての学びや子育てに関する情報を提供することによって、親として育つ機会を設けている。

また、これらの団体は地域の実態に応じて子育てを支援できる利点があり、行政と各団体等とが一層連携を深めながら、地域全体として子育てを支援する環境づくりに取り組む必要がある。

活動の例
女性によるふるさと家庭教育サポート推進事業:県教育庁生涯学習課
  1. 家庭教育相談サポートプログラム:子育て中の親が対象
    公民館や子育て支援センター等において、子育てや家庭教育に関する相談活動を定期的に行う。
  2. 家庭教育実践サポートプログラム:子育て中の親等が対象
    公民館や学校等を活用し、家庭教育支援に関する「ふるさと親学出前講座」「ふるさと託児サポート事業」を行う。

地域の教育力を高めるために

(1)  地域コミュニティの再生

地域住民が帰属意識や連帯感を持ち、様々な年代層が参加して地域活動に取り組むことは地域コミュニティの基盤であり、コミュニティ再生の鍵である。

そこで、各地域においては実施する行事に地域住民が自ら参画し、達成感と充実感を味わうような取組を工夫することが必要である。また、家庭・学校・地域のそれぞれが協力し合って事業を企画し、参加意識を高める啓発活動を行う等、三者が相互に機能を生かした連携を行う必要もある。

行政においても、広報紙等で各行事の日程や内容紹介を行う等、地域住民に対する情報提供等の支援が求められる。

(2)  地域に根ざした体験活動の充実

本県には海や川、森林等豊かな自然環境あるいは各地の神楽や民謡等の伝統文化、各地で活躍した先人の功績等、後世に引き継ぐべきものが豊富にある。また、今でも各地域において夏祭りや伝統行事等独自の活動が根付いている。

そこで、これらを「宮崎のよさ」として捉え、各地域の特性を生かしながら体験活動やボランティア活動等を行うことにより、住民一人一人に郷土に対する誇りやふるさとを愛する心、地域に対する帰属意識等を醸成していくことが重要である。

(3)  地域リーダーの育成

再生された地域コミュニティを更に活性化していくには、その先導役となる地域リーダーが必要であり、併せて各地域内にある活動組織を現場と結び合わせ体系化するコーディネーターの存在が重要となる。

そこで、行政には高齢者等リーダーの発掘、それらリーダーによる若手活動組織の育成、地域リーダーの育成の場の提供及び育成活動をコーディネートする人材の養成等が求められる。さらに、リーダーの育成にあたっては、青少年期から成長に応じて体系化された仕組みをつくることが必要である。

活動の例
若人ひむか活性化塾事業:県教育庁生涯学習課(平成18年度まで)
県下各地域において青年層のグループを結成し、地域づくり活動を地域住民や他の団体等と協働で企画・運営・実践することで、地域の活性化を図るとともに、地域を担う人材を育成する。
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