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第1章 県民一人一人の人間力の向上

1  現状と課題

近年我が国においては、基本的な生活習慣の乱れや社会性の欠如、少年犯罪の多発や低年齢化、将来の明確な進路を見出せない青少年の増加、子育てへの無関心や児童虐待等、一人の自立した人間としての資質や能力を問われる状況が多発しており、人間力の低下が懸念される。

本県においても、朝食を摂らない児童・生徒の存在や少年犯罪発生率が全国平均を上回る等の状況がある。

こうした状況の改善、すなわち人間力の向上に果たす生涯学習の役割は大きなものがあり、全ての教育の出発点である家庭や、その家庭を支援する立場にある地域社会、そして人間力の基盤づくりを担う学校がそれぞれの場において役割を果たしつつ、さらに三者が相互に連携していくことが期待される。

基本的な生活習慣
食事のマナーや態度、早寝・早起き、身体を清潔に保つ、自分で衣類の着脱ができる等、生活するために必要な能力・態度等
児童虐待の分類
保護の怠慢、拒否・身体的虐待・心理的虐待・性的虐待
人間力
「社会を構成し、運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」(平成15年4月内閣府)

2  求められる方策

内閣府によると人間力を構成する要素として、「基礎学力」「論理的思考力」「創造力」などの知的能力的要素、「公共心」「コミュニケーションスキル」「他者を尊重し、切磋琢磨しながらお互いを高め合う力」などの社会・対人関係能力的要素、これらの力を十分発揮するための「意欲」「忍耐力」「自分らしい生き方や成功を追求する力」などの自己制御的要素などが挙げられる。そして、これらがライフステージの全期を通して総合的にバランスよく高まっていくことが人間力の向上につながると考えられる。

そこで、乳幼児から大人まで一人一人の人間力を高めるために、乳幼児期、青少年期、成人期、高齢期の各成長段階での望ましい資質や能力を明らかにすることが、人間力の向上に果たす生涯学習の役割を明確にする上で必要である。

ライフステージ
人間の一生における乳幼児期・児童期・青年期・壮年期・高齢期などのそれぞれの段階
コミュニケーションスキル
社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合う技能

(1)  乳幼児期

乳幼児期における人格形成の基盤づくりは家庭において行われることから、親の姿勢やしつけを通じて、豊かな情操や社会的マナーなどの基礎的な資質、能力を身につけなければならない。

そこで、乳幼児期には様々な体験、例えば日常の遊びや生活・自然体験等を通して、「なぜ」「どうして」という物事に対する好奇心を大切にすること、自然の美しさにふれること、読み聞かせ等によって感動する心を育むことが必要である。

また、その時々の自分の思いを素直に表現するとともに、相手の意見を聞くといった他者とのコミュニケーション能力の育成、さらには返事やあいさつ、エチケット等基本的な生活習慣・態度の育成が求められる。

加えて、子どもの頃から日常生活の中で手伝い等任せた仕事に責任を持たせたり、人の役に立つことの喜びを実感させたりすることで勤労観の素地を培うことも必要である。

(2)  青少年期

青少年期には、自立した人間の育成に向けて、学校等の集団生活を通して生涯学習の素地となる「知」「徳」「体」のバランスのとれた「生きる力」を育成していかなければならない。

青少年期は、望ましい人間関係の形成や自分を大切にし、他者を思いやる心を育成するとともに、社会生活上のルールを習得することも求められる。

また、自分の将来の夢や希望を実現するためには、奉仕活動や職場体験等を通して仕事の大切さに気づかせたり、成就感を味わわせること等によって望ましい勤労観や職業観を育成することが重要である。

さらに豊かな自然、風土、文化等宮崎の特性を生かした学びや地域の伝統的な芸能・文化の継承活動等を通して、ふるさと宮崎を愛し、誇りに思う心を育てることが重要である。

生きる力
「確かな学力」(知)、「豊かな人間性」(徳)「健康と体力」(体)などの力
この「生きる力」をさらに発展させた総合的な力が「人間力」

(3)  成人期

成人期には、一人一人が社会を構成し、発展させる社会人として、家庭や仕事、地域において中核的な役割を担うことが期待される。

家庭においては、男女が互いに家庭生活に対する理解を深め、協力して家庭を築くことや、お互いが親としての役割を十分に認識した上で子育てをすることが必要である。

仕事においては、職業人として現代社会の変化に柔軟に対応するために必要な知識・技能の習得が不可欠である。

地域においては、地域社会の一員として伝統文化等の保存・継承や奉仕活動等の社会活動に積極的に参加し、互いに協力し、支え合って地域づくりに貢献しようとする意識を醸成することが重要である。

(4)  高齢期

高齢期には、個人の新たな生きがいづくりにつながる学びを継続するとともに、地域を活性化させる推進役としての役割を担うことが望まれる。

具体的には、地域での子育て支援や伝統文化の継承活動等の地域活動の場において、長年培った知恵や経験、技能を生かしていくことである。

これらのことは、自らの持つシニアパワーによる地域貢献の一つとして高齢者自身にとっても、新たな生きがいへと結びつくものである。

また、地域内の異世代間交流活動を通じて乳幼児や青少年との人間的なつながりを強め、彼らの地域への帰属意識や地域活動への参加意欲を高めるなど、青少年の健全育成への寄与も求められる。

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