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第2章 成年期における親の学びについて

1  親の学びの必要性について

  家庭は、子どもが基本的な生活習慣や規範意識、道徳心などを身に付ける、すべての教育の原点である。

  しかし、近年の核家族化や少子化、人間関係の希薄化などにより、育児不安の広がりやしつけへの自信喪失、無責任な放任など、家庭の教育力の低下が指摘されている。

  平成26年度の日本PTA全国協議会調査では、82.7%の保護者が、「家庭で子どもに十分にしつけをしない・できない」と感じている。また、平成27年度の県民意識調査によれば、県民の61.4%が「子育てに関して不安感や負担感を感じる」と答えている。

  さらに、親としての役割を家族関係の中から学ぶ機会が低下した現状や、人間関係を自ら作り出せない若者の増加など、親としての活動を始める前に学ぶ機会を提供する必要性も高まっている。

  このため、保護者が親の在り方や子どもへの接し方など、家庭で大切にすべきことを学び合う親としての学びと次世代を担う青少年が自立した大人になるために必要な親になるための学びを併せ、親の学びとして位置付けていくことが求められる。さらに、親の学びを通じて学習者相互の人間関係づくりが図られ、連帯意識の向上や相談体制の整備にもつながっていくものと考える。

2  親の学びの課題について

  本来、保護者が親の在り方や子どもへの接し方など、家庭で大切にすべきことを学び合う親としての学びは、「祖父母から親へ」、「親から子へ」というように継承的にそれぞれの家庭で行われていた。しかし、核家族化の進展や、個人の価値観の多様化など、親としての学びを継承的に学ぶことが難しくなってきている。

  また、参観日やPTA活動など、子育てに関する情報を得る機会があるにもかかわらず、様々な要因から学びの場へ参加しようとしない、参加できない保護者が見られる。特に、平成23年社会生活基本調査(総務省)によれば、父親の育児にかかわる時間は、増加傾向にあるものの、母親との間には依然として差が見られる。

  このような状況に対応するためには、県だけではなく、市町村や関係団体、企業等と連携した支援体制の整備が求められる。さらに、家庭教育の学習形態として実施してきた「座学」中心の講義形式は、参加者にとって受け身的であり学習の深まりや広がりが望めないなど、学習形態の改善も必要である。

3  親の学びの進め方について

  保護者が「親」としての在り方を学びながら親の意識を向上させていくとともに、「親の姿を見て子どもは育つ」といわれるように、親の学びは子どもの成長へとつながるという循環を生み出していく必要がある。

  このようなことから、親の学びをより実践的な内容でのプログラムとして作成し、子どもの発達段階に応じた均質な学習内容の保証や、学習者である保護者が子育ての中ですぐに活用できる工夫が求められる。次世代を担う青少年が自立した大人となり「成年期」を迎えるために必要な「親になるための学び」についても同様なプログラムを作成するとともに、学校やPTA、関係組織等と連携し、推進していく必要がある。

  例えば、学習形態については、講義を中心とした受け身的な学習にとどまらず、学習者主体の参加型学習を取り入れるなどの工夫が不可欠である。参加型学習には、学習への主体性を向上させるとともに、子育てに関する相互の連帯意識の形成など、教育効果が期待される。さらに、プログラムの実践・活用については、就学時検診やPTA研修会、学級懇談だけではなく、社会教育施設等を活用した多様な場や参加者主体による展開が期待される。

4  親の学びの県民への展開方策について

  プログラムについては、平成25年度に県教育委員会で原案を作成し、県社会教育委員会議の中で検討して作成している。親の学びを全県的に展開するためには、プログラムの作成とともに、プログラムの活用を推進する全県的な指導者(チーフトレーナー)と、プログラムを活用し学習を実践する指導者(トレーナー)の養成などの体制づくりが必要である。

  また、親の学びについて、広く県民への理解を得るために行政・社会教育関係団体、企業、学校、地域などの多様な連携が不可欠である。さらに、親世代に対しては、学校、企業、地域からの積極的な広報・啓発を進める必要がある。

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