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宮崎県立図書館ビジョン懇談会

第3回 宮崎県立図書館ビジョン懇談会の要旨

1 開催日時

平成28年9月26日(月)午後1時30分から午後4時30分まで

2 場所

宮崎県立図書館(宮崎市船塚3丁目210番地1)

3 懇談会委員出席者(敬称略)

根岸裕孝、中川美香、宮田香子、山内利秋、巻庄次郎、小橋智子、高峰由美、
川越祐子、山内研二、鈴木直樹

4 次第

(1) 生涯学習長挨拶
(2) 事務局説明
(3) 委員発表
(4) 協議

  • 宮崎県立図書館ビジョン懇談会提言書(案)について

5 会議内容及び主な意見

(1) 生涯学習課長挨拶

  • 前回の懇談会の前半では9名の委員の皆様から、県立図書館への今後への期待について、御発言いただき、その後半では皆様の発言内容を受けて「人材をどう確保・育成していくか」「場所・空間をどう生かしていくか」「どのようなネットワークを築いていくか」の3点についてご意見をいただいた。
  • この第3回は本懇談会の最後となる。前回、図書館が変われば地域が変わる、というようなビジョンをつくってほしいという御意見をいただいた。宮崎全体が元気になるための県立図書館の将来像について、委員の皆様お一人お一人に忌憚のない御意見をいただきたい。

(2) 事務局説明

  • 県では、このビジョン懇談会での委員の皆様の提言や、アドバイザーの糸賀先生の御意見、県内図書館関係者、有識者のヒアリング、県立図書館協議会での委員の方々の御意見などを踏まえ、 教育庁内で県立図書館のあり方、県立図書館の役割、機能、組織・人事、県内の図書館振興について検討し、今想定し得る10年後、またその後の社会を見据えた「宮崎県立図書館ビジョン」を来年度までに策定予定である。
  • そのビジョンをもとに、5年間の行動計画を策定する。行動計画については、経過を含めた外部・内部の評価を行い、県として、ビジョンと照らし合わせながら、その改善・見直しを逐次行っていく予定である。
  • 全都道府県立図書館の統計の速報を元に整理した。本年度資料費については、全国で30位である。昨年度実績で、一昨年度から順位が上がっているものとして、受入図書数、個人貸出数、入館者数、年間開館日数がある。各館で基準がまちまちではあるが図書館への貸出数は昨年度実績は43位である。これについては本年度、物流を充実したため、来年度以降の伸びが期待できる。レファレンス件数においては、レファレンスの受付件数のカウントの方法についても、全国それぞれの館の基準がまちまちであり一概に順位づけは難しいが、一昨年度から若干順位が下がっている。また、専任司書割合については39位から42位に若干下がっている。

(3) 協議

【1】社会状況の変化について
  • 図書館は社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)に、公共施設の中で直接的に関わることが大きいと思われるので、それを含める必要がある。(山内利秋委員)
  • 子ども、子育て世代の活字離れの状況について触れる方がいいのではないか。(山内研二委員)

【2】職員に必要な心構えについて
  • 「職員に必要な心構え」を「職員の役割と心構え」に変えるなど、専門職の役割についてこの項目に明記してはどうか。今あるゲートキーパーのような例は、役割の話ではないか。(山内研二委員)

【3】専門職の配置と育成について
  • 博物館と比べると図書館の専門性は見えづらく、誰でもできると思われがちである。一般県民の方に図書館の専門性についてもっと強く訴える必要がある。(山内利秋委員)
  • 専門職の配置とその長期的な人材育成について、研修を実施するだけでなく、例えば認定司書に挑戦したい司書を応援するような支援制度を整備していく必要があるのではないか。(山内研二委員)
  • 以前は専門職を採用していた。今も他県では採用が行われている。宮崎では行政職が配置されているが、いくら行政職が優秀でも3年~5年ではやりきれない事が多い。根幹の仕事をしっかり行いつなげていくには専門職が必要だ。その上で、様々な職種が混ざり合い多様なニーズに応えていくことができる。(巻庄次郎委員)
  • 研修が行われても3年位で身につくのは初歩の部分のみである。図書館内で異動があるとしても5年~10年続けて働き専門性を高められるようにしてほしい。(宮田香子委員)
  • 県民が必要とする情報を提供していくための司書の専門性を分かりやすく表すのに、図書館マイスターなど柔らかい名前を使ってはどうか。(根岸裕孝委員)
  • 図書館の専門性をもとに、利用者(県民)に図書館員の顔が見えるような取組みを行ってほしい。(巻庄次郎委員)
  • ICT及びICT教育・アクティブラーニング等に対応できる技能を備えた人員の配置・育成が必要である。①インターネット、SNS、オンラインデータベース、オープンアクセス、オープンサイエンス、ディスカバリーサービス等のICTに精通し、導入計画等の策定、配備後の指導・管理が可能な人員の配置・育成、②アクティブラーニング(ラーニング・コモンズ)においては、サービスカウンター等で、パソコンの貸出や周辺機器・ソフトの操作法指導、文献探索法の指導、関連資料についての助言が可能な人員の配置・育成が必要である。(小橋智子委員)
  • 特に児童サービスは経験がものをいう。長いスパンで考え、育ててほしい。(巻庄次郎委員)

【4】その他人材について
  • 市町立図書館のモデルとなるようなパイロット事業を行うにあたり、外部とのネットワークを強化するためにも、民間からの職員採用も視野にいれてもいいのではないか。(山内研二委員)
  • 糸賀アドバイザーが前回話された図書館主事については、ぜひ入れ込んでほしい。(宮田香子委員)

【5】運営について
  • 総務省が現在、地方交付税の算定基礎の見直しを行っており、これまで図書館について正職員でしていたものを業務委託で算定しようとしている。民間委託の他にも 公益財団法人による運営も考えられる。ここではなぜ直営を選ぶのかしっかり理由を示す必要がある。(巻庄次郎委員)
  • 直営が必要というならば、前提として専門人材の育成が絶対条件だと明記するべ きであろう。専門性を担保した上での直営でなければ、指定管理等の運営により成功している文化施設もある以上、県民の納得は得られない。認定司書の育成の支援、図書館主事の配置など具体的な提案を行い、どのような覚悟をもって直営を選ぶのか、ここは懇談会の提言として厳しさと緊張感を持った表現にすべきである。(中川美香委員)
  • 専門性が担保されていなければ直営の意味は無いのではないか。専門性を担保することについては明文化が必要である。(根岸裕孝委員)
  • 図書館先進国のアメリカで行われているようだが、運営においては、顧客のニーズを常に考える姿勢をもち、「ミッション・戦略 → 潜在利用者のニーズ調査 → ニーズの分析 → 施策(→実行) → 評価・再検討 →」サイクルの絶え間ないマーケティング活動を行うなど、マーケティングの視点も必要ではないか。(小橋智子委員)
  • マネジメントとして、自己点検などPDCAサイクルのように図書館で目標をもった後検証するのが重要である。(根岸裕孝委員)
  • 現在図書館への貸出数が少ないが、統計等をもとに数値の低い理由等については分析を行ってほしい。(巻庄次郎委員)
  • 宮崎県も単純に県と市町村を一律に考えるのではなく、マーケティング的な視点を取り入れ、宮崎市と他の市町村についてなど、アメリカのような調査ができるかは別に、経営戦略的に見ていく必要があるだろう。
    (山内利秋委員)
  • 先進的取組を行う鳥取県では、行政組織の問題かもしれないが、図書館が独立して動いている。図書館のガバナンスのために、県立図書館と主管課の生涯学習課とどちらがイニシアチブをとるのがマネジメント的に望ましいのか気になる。(根岸裕孝委員)
  • 人材については、司書の育成の話に絞ると、個人の話になる。個人を育てるということはもちろん大切だが、それとは別に、変化していく社会情勢の中で、「頼れる図書館」をつくるために、例えばではあるが「地域課」といった組織をつくれば、宮崎の課題に応じ資料の収集・保存・活用、イベントや相談会の企画、外部専門家や機関とのネットワーク化など、戦略的に考えることが可能になるのではないか。職員の心構えのところに書いてある「前のめりなほどの熱意」は個人の資質であり、採用を含めた現在の人事システムでは、全員にそれを求めるのは難しい。人が代わっても、部署としてのミッションが明らかであれば、県民に必要なサービスを責任持って、持続可能的に進めていけるのではないだろうか。また部署などが言葉となって出てくることで、県民も、県立図書館がどういうところを見て動いているのかが分かりやすいのではないか。(中川美香委員)

【6】市町村の図書館等への支援について
  • 県内で市町村の図書館でサービス部門に従事するのはほとんどが非常勤職員や臨時の職員であり、なかなか館を超えた横のネットワークを築くことができない。どのような研修が必要かなど、市町村の実態を十分見ていただきたい。(巻庄次郎委員)

【7】県内図書館のコミュニティ形成について
  • 現在学校図書館では、別個に分科会等もある大会を開催している。もし大会を開くのであれば、現在ある学校図書館の会も一部に入れ込むなど整理が必要だろう。(鈴木直樹委員)
  • 自分の勤務する図書館の事しかなかなか見えない。ビジネス支援、医療情報など、本当は図書館というのは0類から9類、全てを網羅した知の宝庫であり、どのような人にとっても縁深いものである。色々な図書館があり、色々な運営方法があることを知り、横につながり、交流していくために、図書館大会があるといい。従来の図書館大会はどちらかといえば読書推進に重きをおいている。しかし今、別の利用の仕方が見てきている。図書館=本を読むところ、というだけでなく、新しい意見やアイデアが出てくるかもしれない。今、宮崎で新たな形で開催するといいのではないか。(宮田香子委員)

【8】資料収集とその活用について
  • 「県内関連資料」は地域資料としたほうが良いだろう。また、「保存」という言葉を入れてほしい。保存していくことで、将来、今の我々が思いつかない活用の可能性も広がる。図書館は百年とか長い単位で蓄積していく重要な役割をもつ。その点から、「収集、保存、活用」としたい。(山内利秋委員)
  • 市町立図書館は保存スペースが限られるため、県立図書館が保存図書館として機能してくれるといい。また、分担保存など、保存について県立図書館が中核になって考えてほしい。(巻庄次郎委員)
  • 行政資料の収集は難しい。県と市町村で互いに資料を届け合い保管し合うことができるといい。また、地域資料の整備を促進する体制づくりは県立図書館にしかできないと考える。(巻庄次郎委員)
  • 県が横断的に博物館、図書館、文書館の三者でアーカイブを構築していくことが大事ではないか。(山内研二委員)
  • 文化財保護事業で、県内各地でDVDを多く作っている。地域の映像資料について、県立図書館に一元的に集めると有効ではないか。また、地域資料の献本をアナウンスすることも必要ではないか。(山内利秋委員)

【9】場の整備と活用について
  • 県民同士だけでなく、グローバルにナレッジ(知識)がシェア(共有)できる場があるといい。例えば、宮崎は世界的にも先進的な農と食による地域づくりを行っている県である。海外から勉強に来ている学生もいる。農と食について、行政と民間の連携の内容、政策等が多言語で集積されていると、学生の利用も増えるだろう。(高峰由美委員)
  • 飲食の場やラーニングコモンズなど、ゾーニングについてふれてはどうか。(山内研二委員)

【10】ネットワーク化について
  • 前回アドバイザーの糸賀先生から、図書館大会の話があった。本来図書館には本を借りている人以外にも様々な方が関わっている。資料費の大幅削減のあった際、色々な方から心配の声が寄せられた。図書館だけでなく、色々な組織や団体、地域の方々、県民とともにつくりあげる図書館だという事を示し、確認する場が必要ではないか。(根岸裕孝委員)
  • 学校図書館への司書教諭、学校司書の配置について提言に盛り込んではどうか。(川越祐子委員)
  • 現在「高等学校図書館」となっている箇所について、高校だけではない小中学校も含めてはどうか。また、図書館のあり方だけでなく、具体的な業務について学ぶ研修があるといい。(鈴木直樹委員)

【11】おわりについて
  • イノベーションというのは、空気を読み、ニーズを把握した後で情報を揃えていくというよりも、自ら空気を創っていくということだろう。県では食や医療など、様々な計画を策定している。それらの政策との連動性があるといい。一つ絞り込み、その専門の県職員を配置する、県職員以外でも、専門人材が張り付く、あるいは図書館内で育てるために週に何回かレクチャーするなど、今までと異なるプラスのナレッジが図書館で得られると、独自性を出すこともできる上に、活用したい県民も増えるのではないか。(高峰由美委員)
  • ナレッジのシェアにより、行政の政策も良くなるとともに、民間のプロジェクトやビジネスなど、地域の課題解決や振興にもつながる。そこを県立図書館の役割として、最後に触れるのではなく、項目として表に出てくるといい。(中川美香委員)
  • この「おわりに」にある事がミッションに近い内容ではないか。これをはじめの部分にもってきたほうがいいだろう。(山内利秋委員)

【12】図書館のミッションについて
  • 図書館はなぜ税金で賄われて運営され、無料なのか。誰でも、いつでも、平等に情報を得ることのできる図書館による環境づくりが、民主主義社会を支えている。社会のセーフティーネットとして全ての人に開かれ、情報提供することこそが図書館の存在意義と考える。(巻庄次郎委員)
  • 「Live!Library」というコピーに、これが作られた当時の県立図書館のミッションが込められていたのではないか。今の社会情勢に合わせ、その当時の思いに肉付けを行ったり、そぎ落とす作業が必要だろう。(山内研二委員)
  • ミッションの後にどういったステークホルダーが存在するか、図の形で入れると、一般利用者だけではなく、全ての人が図書館に関わる事が分かるのではないか。(山内利秋委員)

【13】その他
  • 社会状況の変化や宮崎の資源を踏まえ、図書館がどのような責任を担い、どういう方向を目指すのかという話、ミッションに関わる部分を最初にあるほうがいいだろう。その上で、人や予算、組織の事になるのだろう。
    (根岸裕孝委員)
  • 最後にもってきているアドバイザーの糸賀教授のアドバイスの内容は、我々も議論し賛同したところである。我々の提言内容の中に折り込んでほしい。(根岸裕孝委員)
  • なじみのない言葉の注釈はそのチャプターごとに書いてあるほうがいい。(宮田香子委員)

(4) 閉会

【1】館長

 宮崎県立図書館が、県立図書館としてこれから更なる高みを目指していくときに、どうあるべきかということを様々な観点からご意見いただいた。感謝をもって真摯に受け止め一歩ずつでも前に進んでいきたい。実現には人材が課題である。司書資格の有無に関わらず熱意、情熱、使命感は重要なファクターだろう。人材が胆だという思いを強くした。人材、予算、高いハードルがある。県立図書館だけでなく、生涯学習課、教育委員会全体で一体となって取り組んでいくべき大きなテーマだろう。根気をもって着実に進んでいきたい。


【2】生涯学習課長

県立図書館を含め、様々な館のこれからのあり方を問われる、この非常に貴重なこの時期に県立図書館と足並みをそろえ仕事ができる事に誇りと責任を感じながら日々務めている。本日具体的に多くのご意見をいただいた。県民に分かりやすい形で提示させていただきたい。


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第3回次第  (PDFファイル 73KB)
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第3回要旨  (PDFファイル 266KB)
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第3回協議・閉会あいさつ全記録  (PDFファイル 441KB)
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