宮崎県立図書館ビジョン懇談会

第2回 宮崎県立図書館ビジョン懇談会の要旨

1 開催日時

平成28年7月22日(金)午前9時45分から正午まで

2 場所

宮崎県立図書館(宮崎市船塚3丁目210番地1)

3 懇談会委員出席者(敬称略)

根岸裕孝、中川美香、宮田香子、山内利秋、巻庄次郎、小橋智子、高峰由美、川越祐子、山内研二

4 次第

(1) 教育振興次長挨拶
(2) 事務局説明
(3) 委員発表
(4) 協議

  • 人材の確保・育成について
  • 場所と空間の活用について
  • ネットワークについて

5 会議内容及び主な意見

(1) 教育振興次長挨拶

  • 前回の懇談会では、アドバイザーの糸賀先生から県立図書館には第二線図書館としての役割があり、市町村の図書館など県民全体の図書館利用がどう変化していくかが評価されていくべきだろうというお話があった。 委員の方々からは、市町村や学校を支援する県立図書館への期待、災害時における県立図書館のリーダーシップ、専門職の人的配置や人材育成など幅広いご意見をいただいた。
  • 前回に引き続き、今の県立図書館の課題や解決策、将来の理想とする県立図書館像などについて専門的なお立場から忌憚のない意見をいただきたい。

(2) 事務局説明

  • 3回の懇談会で出た意見は、今後、提言書という形で公表する。
  • 県では、その後、県の総合計画や教育振興基本計画を踏まえるとともに、懇談会の提言内容や県内の有識者の方々へのヒアリング、県立図書館協議会での意見など、県民の皆様からのニーズを踏まえた上で、教育庁内で、県立図書館の役割、機能、組織・人事、県内図書館の振興について改めて協議し、長期的な計画である「宮崎県立図書館ビジョン」を平成29年度に策定する予定である。
  • このビジョンは今想定し得る、10年後にあるべき宮崎県立図書館像となる。
  • このビジョンに基づき、県では、5年単位程度の行動計画を策定し、業務統計やアンケート、ヒアリング、協議会等により内部評価、外部評価を行っていく予定である。

(3) 委員発表

○ 小橋 智子委員
  • 県内大学図書館として、県立図書館により、県内図書館(大学図書館や公共図書館等)のコミュニティ形成や情報発信を行う場を構築し、県内図書館相互の図書館サービスの向上を図ってもらいたい。
  • 今後、県内図書館の教育(人材育成)、研究(学術的研究・図書館学)機関的機能に重心を置き、施策を立て、県内図書館全体の底上げ(市町村・学校・大学図書館の質・量の向上、人材育成)を図ってほしい。
  • 幅広い分野の資料収集と県内関連資料、貴重資料の電子化と公開により、「知の共有」を目指してほしい。

○ 高峰 由美委員
  • ビジネスの相談はいわば人生の相談であり、他人に話すのは恥ずかしい。その点、図書館はオープンで来やすく、知の集積施設としての参考書籍も多く、レファレンス機能も充実している。
  • 一方県立図書館は、地理的にはビジネス街から近いものの、ビジネスマンにとって心理的距離感がある。宮崎市内でも行政主導ではない民間セミナーの類が増えており、民間はコラボしたがっている事も多い。距離を縮める方法の一つとして、図書館の方から積極的に街に出て行くということも考えられる。

○ 山内 研二委員
  • 豊富な蔵書を生かし、図書館の資料やレファレンスを活用しながらディスカッションし、作業ができる場があってもいい。
  • 自立的な発想力と自己解決能力を高めるための教育のために、資料のアーカイブズやレファレンス機能を充実させると同時に人材育成も必要である。
  • 人材育成のカリキュラムなどをつくり、マネジメントをする人材と、収集やレファレンスほかバックヤードの仕事を行うスペシャリストとしての人材が求められる。
  • 図書館で働く人は、本に真摯に向き合い、本好きで、本を皆に広げていこうと前のめりなほどの熱意をもっていることが前提条件である。

○ 川越 祐子委員
  • 宮崎の情報が雑誌でとり上げられたとき、県立図書館が収集している雑誌以外にも、掲載されている情報だけでも蓄積するといい。掲載情報等について県の職員ほか、県民の方に情報を募ってはどうか。雑誌は書籍とは異なる観点で書かれたものも多く、大切な情報源である。
  • 仕事上、県や市町村の職員と接する中で、これらの職員が図書館を使って調べたり、レファレンスサービスを利用していない事を感じる。県や市町村の職員ももっと図書館を利用すればいい。

○ 山内 利秋委員
  • 現在の県立図書館のデジタルアーカイブはユーザ・インターフェイスの面から利用者が使いにくい。また、電子化されていない貴重書もあるのではないか。文化財課が管理している「みやざきデジタルミュージアム」には、県総合博物館のみならず図書館と同じ所管である県立美術館の資料もある。ここには県立図書館は入っていない。せめてリンクくらいは貼るべきである。
  • 大学図書館にラーニングコモンズが整備されつつあるが、県民のリテラシー向上のために、むしろ公共図書館に必要な場と考える。県立図書館は後方支援機能が重視されるべきだが、宮崎の実績にあった独自の学習形態モデルをつくり、それを基礎自治体にフィードバックさせる役割がある。

○ 中川 美香委員
  • 県立図書館は、社会の様々な分野について横断的に捉え、幅広くどんな課題に対しても扉を用意している、宮崎で唯一の施設であるという特徴を強く認識すべきである。
  • 人口減少社会の中、知恵が試される時代が来る。今のうちに、「困ったら図書館へ」という道筋をつくり、県立図書館とともに市町村くまなく頼れる図書館になっておくことが必要である。そのための県立図書館のリーダーシップが求められる。
  • 本だけではなく人に出会えるのが図書館の魅力である。自殺対策のために、国では「ゲートキーパー」を養成しようとしている。図書館の職員には、県民が暮らしの上で困ったとき、サインに気付き、必要な情報を提供し、人や機関を紹介できるゲートキーパーとしての意識をもってほしい。
    ※ ゲートキーパー……
    自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る人)を図ることができる人。

○ 巻 庄次郎委員
  • 県立図書館が使命感をもって県民や市町村立図書館等の期待に応え、その信頼を得て十分な役割を果たしていくために、専門(司書)職制度の復活が急務である。
  • 図書館経営では、
    1 図書館サービスのノウハウの蓄積と継続的な進化ができること
    2 専門職を配置するだけでなく、その人材を育てていく仕組みがあること
    の二つが大切である。司書の資格取得はスタートでしかない。その後の人を育てる仕組みがあわせて必要である。

○ 宮田 香子委員
  • 児童サービスは、乳幼児など人生で最初に図書館を意識して活用する入り口にいる人に行う一番大切なものである。県立図書館に児童サービスについて相談できる専門性とコーディネート力を持った人と部署を置くことが必要である。
  • 人は受けたことのないサービスをイメージする事が難しい。図書館サービスは供給が需要を生む。県立図書館に児童サービスの担当部署を継続性をもっておき、児童サービスを供給する体制を整え、県全体の児童サービスを構築することが望まれる。
  • 図書館の民間委託は官製ワーキングプアーを生み出している一面もある。若い人達を育て、彼らに図書館で情熱をもち働き続けてもらうためにも、図書館は民間委託ではなく直営で行うべきである。
    ※ 官製ワーキングプア……地方自治体の非正規公務員の賃金水準が低いことが社会問題とさ れ、「官製ワーキングプア」などと呼ばれるようになった。

○ 根岸 裕孝委員 図書館と政策づくり
  • 地方分権、自己決定、自己責任という流れの中、自治体職員にはそれにふさわしい政策形成能力が求められる。政策形成の上では相当な情報収集と検討が必要である。図書館も関わり、職員の政策形成力の向上を図る必要がある。
  • 地方議会の活性化は地方分権の時代に不可欠である。より議会が活発になるため に、議員の質問づくりの相談会を県立図書館で実施すると良い。
  • 図書館が政策作りのリアルな現場をいくつも踏んでいくことにより、図書館自体の能力向上につながる。
  • 今後、社会教育は地域づくりのために首長部局ともっと連携を強め、様々な現場とつながり、視野を広げる必要がある。県立図書館を生かし、官による貸部屋・貸本屋のイメージを脱するイノベーションを行ってほしい。

(4) 協議


○ 人材の確保・育成について
  • 特に県立図書館の業務は縦割りになっており、館内の色々な部署を経験しなければ見えてこないこともある。事業の継続性のためにも、司書として基礎知識のある専門職を採用し、様々な経験をさせながら、人事交流も行い、育てていくことが必要である。(巻庄次郎委員)
  • 県立図書館として専門知識やノウハウのストックがあり、情熱的なスタッフにより、市町村の図書館などが抱える課題を解決するヒントが見つかり、アドバイスを受けることができるような、つながりのある場、皆で前進していく場になってほしい。(中川美香委員)
  • 人の育っていくシステムとして、一緒に伴走してくれる先輩司書の存在が必要である。(山内研二委員)

○ 場所・空間の活用について
  • 知恵、知識を交換するというのは図書館の大きなコンセプトになるのではないか。知識や経験などナレッジシェアする形でコンセプトを考えると、図書館というハコにこだわらない方法が色々見つかり、枠が広がるのではないか。そのことにより図書館の職員も動きやすくなるのではないか。(高峰由美委員)

○ ネットワークについて
  • 県や市町村の職員に図書館がどんな風に活用できるかが理解され、図書館の活用が広がると、職員は自分が現在情報を把握していない各地からの問合せにも答えることができるようになる。まずは県立図書館により、自治体職員の図書館活用を普及させれば、次第に県内の図書館に波及していき、そのことにより県全体が活性化していく。そのような流れが、図書館の古い文献等から、昔の価値あるものを再発見し、新たに情報発信するきっかけにもつながるのではないか。(川越祐子委員)
  • 博物館と図書館は人事交流があるが、個人レベルのつながりはあっても、組織としての横の連携、「横割」が不十分に見える。もっと連携を深めることが可能ではないか。(山内利秋委員)
  • 子どもの読書の関係団体などのネットワークづくりとともに、その団体への図書館としての情報発信が必要である。(宮田香子委員)

○ その他
  • ビジョンは、今にとらわれるのではなく、未来の人の事を考え、先を見るという方向でつくっていくことが大切である。(中川美香委員)
  • 委員の意見がかなう形を明確に考えていただきたい。(山内利秋委員)
  • 図書館が変われば地域が変わるというようなビジョンをつくっていただきたい。(根岸裕孝委員)

[その他委員の質問に応じた糸賀アドバイザーからの助言]

○ 「司書」資格の取得と、図書館で専門的な仕事を行い経験を積み、司書らしい独創性と判断力を身につけることは別である。司書資格をとらせて、数年後には異動させ、また次の人に司書資格をとらせる、という今のシステムでは、司書の専門職集団、組織は育たない。他県では、他の図書館で経験を積んだ人を中途採用をしている例もある。宮崎県に必要なのは中長期的な司書の人材育成計画だろう。司書資格者を増やすことではなく、認定司書を増やすような目標を持つ必要がある。
※ 認定司書……
日本図書館協会が専門職員として図書館経営の中核を担いうると認定した司書。図書館での実務経験とそれに伴う実践的な知識及び技能の継続的な習得を重視する。

○ 県教育委員会に、司書としての図書館での実務経験とともに行政的知識も備え、県全体を見渡すことのできる立場の、「図書館主事」のような人材が必要だろう。その人が県立図書館の相談相手になると同時に、市町村の図書館の振興を考え、アドバイスし、政策をつくっていく、という事も考えられる。

○ 県立図書館のビジョンを考えたとき、県立図書館で、ラーニングコモンズなどを実施することは、それがモデルとなり、市町村の図書館にも広がる、というような先導的な役割としては考えられる。しかし、県立図書館がやりさえすれば、市町村は県立図書館に任せっきりというものではない。
また、今の司書資格を取得するための24単位という限られた単位の中では、ラーニングコモンズ的な提案や企画力を身につけるのは難しい。中長期的な人材育成により、まずは司書として、図書館で基本的な図書館の知識を身につけさせ、そこから先、経験を積み重ねさせることで、広い視野にたった企画もできる司書が育つ。

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第2回次第  (PDFファイル 63KB)
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第2回要旨  (PDFファイル 262KB)
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第2回講話・協議全文  (PDFファイル 502KB)
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