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県立図書館についてのヒアリング

小林 隆志 氏

小林 隆志 氏

※ 鳥取県立図書館 支援協力課長

ヒアリング日 平成29年2月6日(月)
  聞き手 清家(生涯学習課)・福田(県立図書館)
  文責 生涯学習課



県立図書館とは何のためにあるか

  • 一番重要なのは、県民に一番近いところにある市町村立図書館がきちんとサービスを行うこと。そのためには、全市町村に図書館が設置されることが理想であり、そこの機能が充実することが大切である。市町村立図書館をバックアップする都道府県立図書館としてどういう役割を担っていくのか、市町村とその役割分担をはっきり意識することが大切である。

資料収集にみる市町村と都道府県の図書館の役割分担

  • 例えばどのような資料を揃えるか。イメージの話だが、数週間に一度とか、日常的に市民が必要とするような資料は市町村立図書館が揃える。数か月に一度利用されるような少し専門的な資料については、都道府県立図書館が揃える。さらに数年に1度しか利用されないような非常に専門的な資料は国立国会図書館等から取り寄せて提供する。そのような全体の仕組みの中で県立図書館がどういう役割を果たしていくのかということをきちんと意識することが必要なのだと思う。
  • 鳥取県立図書館は約1億円の資料費、鳥取市立図書館は約4千万円の資料費がある。この蔵書の内容がほとんど重なっていれば、どちらか一つの図書館でいいのではという話になる。しかし双方が持つ資料の重なりが少なく、両方あわせると1億4千万円分の幅の資料が提供できるということが棚を見て明らかに分かるような蔵書構成になっていれば、ああ、お互い役割分担して仕事していると住民にも分かる。現実には、鳥取県立図書館にも様々な利用者がいらっしゃるので、「少し」は重なっている部分がある。しかし、そこは、図書館側として重なりのない部分をどのように見せるかを工夫すべきではないかと思う。

県立図書館はなぜカウンターを持つのか

  • なぜ、都道府県立図書館がカウンターを持って直接サービスしているのか、直接サービスは市町村立図書館に任せればいいのでないかという議論がある。私は、都道府県立図書館もカウンターを持つべきだと考えている。それは、都道府県立図書館職員がカウンターの仕事を「実験場」、「実験台」として捉えて、住民が必要とするサービスを開発していくための場所、経験値を高める場所と考えているからである。その意味合いを職員が感じつつ仕事をしていかないと、直接の来館者のためだけを考えてサービスを行っていることになり、市町村立図書館との差を説明できなくなる。

児童サービスをなぜ県立図書館で行うのか

  •  都道府県立図書館には児童サービスは不要ではと考える人もいる。実際、児童コーナーの無い都道府県立図書館もある。それは、児童サービスを都道府県立図書館で行う意味合いを説明しきれてないからだと思う。
     市町村立図館で児童サービスを行うのは当たり前のサービスで、図書館業務の中核である。しかし、多くの場合市町村立図書館の職員は働く条件はあまり良くなく、短 期間で担当が変わることも多い。
     一方で児童サービスの根幹はスキル(技術)であり、経験を積まなければ身に着けることのできないものである。
     もし、市町村立図書館の職員から都道府県立図書館に児童サービスについてアドバイスを求められたら都道府県立図書館の職員はどう答えるのだろう。都道府県立図書館に児童カウンターが無ければ、経験を積んだ職員はそこにはいない可能性が高い。市町村立図書館の職員と、同じ土俵の上に乗れないでアドバイスなんてできるだろうか。都道府県立図書館の職員がきちんと児童カウンターでスキルを身につけて初めて、お互い同じ土俵の上で、こうしたらどうか、ああしたらどうか、こんな研修を一緒にしようかという話ができる。
  • そうやって児童サービスで考えてみるとビジネス支援サービスでも全く同じこといえる。ビジネス支援ということについて経験値のある職員が都道府県立図書館の中にいるから、市町村立図書館で取り組みたいと言われたときに、提案やアドバイスができるのである。都道府県立図書館がビジネス支援を全く意識しないで仕事していたら、市町村の図書館から相談されても応える術がない。そこはやはり実験的に色々な経験をしておかなくてはならない。都道府県の職員が経験値を高めていくためにカウンターをしているとすると、市町村立図書館と同じ土俵でサービスの提案ができる。これはどのサービスにも言えることであり、特に児童サービスに顕著に言える。

鳥取県立図書館の市町村支援体制

  • 都道府県の職員の仕事の醍醐味は都道府県という広域なフィールドを舞台に、新しい仕組みや施策をつくっていくことだと思う。これは、都道府県立図書館の職員にも当てはまる。都道府県の職員である以上、都道府県全体を見据えた図書館政策の立案という視点が必要だ。都道府県立図書館だけでは、隅々まで本を届ける仕組みを構築することはできない。市町村図書館という拠点がなければ、都道府県全域に行き渡る図書館サービスはできないのだ。であるならば、未設置の自治体に図書館設置の働きかけを行っていくことが第一に求められる都道府県立図書館の仕事であると思う。
  • 補助金の交付等は今のご時世、なかなかできないかもしれないが、そこの図書館の方が元気になるような仕掛けはできる。例えば今、宮崎県は7割の設置率。あと3割働きかけるべき未設置市町村がある。これらの自治体にどういう支援ができているのか考えることは重要だ。そして、3割の市町村への支援は均一である必要は無いと思っている。(本や情報を求めている県民に対するサービスは均一であるべきと考えているが)それは、それぞれの自治体ごとに様々な事情があるのだから、一度にすべての自治体に図書館が設置されるわけもない。まずは、図書館をつくろうと思っているところを最大限支援していかないといけない。そういう気運が盛り上がっている自治体があれば、年10回でも20回でも行く、そういう姿勢が必要だと思う。
  • 市町村が、いざ図書館建築を計画したときには、都道府県立図書館の職員が頼りにしてもらえる存在でありたいと思う。

その他鳥取県立図書館の事例

  • 宮崎県と鳥取県の組織構成としての違いは、鳥取県の場合、本庁化されていることと専門職としての司書を採用しているところにある。従って鳥取の場合は図書館が直接議会対応もやるし、予算対応を行っている。また、鳥取県の場合の他課との関係では、読書振興は社会教育課、図書館振興は県立図書館という整理をしている。本庁化、専門職採用等の組織的な違いは、今後の宮崎県の方向性を考えていく上でのキーになる部分ではないかと思う。
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小林 隆志氏(鳥取県立図書館 支援協力課長)H29.2.6  
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