3.学習方法

地域住民の実態及び関心・意欲に基づいた学習を効果的に進めるためには、学習内容に沿った学習方法の検討が重要です。これまで同和教育が培ってきた手法に加えて、国際的な人権教育の潮流の中で、現在、多種多様な学習方法が導入されています。したがって、それらの特性や学習指導上の留意点を踏まえながら、最も適切な学習方法を選択するようにしなければなりません。

また、人権感覚を育て、人権尊重の精神を養うためには、学習者が自分で考え、感じ、活動するという主体的・実践的な学習方法を多く取り入れるようにしなければなりません。

1.参加体験型学習(ワークショップ)

(1).ファシリテーター(進行役)として心がけたいこと

  • 聞く、話す、書く、考える、発表するなどの活動をバランスよく取り入れること。
  • 自らも学ぶ態度で臨み、学習者の立場で考えること。
  • 学習者の主体的な学びや気付きの妨げになるような指示等はしない。
  • 一人一人の意見や考えを否定せず、互いの気付きや考えの深まりを大切にすること
  • 学習のねらいを常に念頭におき、学習活動そのものが目的となることのないように留意すること。

(2).基本的な学習の進め方

  1. アイスブレーキング
    ファシリテーター(進行役)は、これから始める参加体験型学習のねらいを説明し、アイスブレーキング(氷を壊すという意味)を行います。学習者の緊張感をほぐし、主体的に参加できる雰囲気づくりに必要な活動です。 アイスブレーキングには、仲間探し、部屋の四隅(4つのコーナー)、誕生日チェーン(バースデーライン)、名刺作り、フルーツバスケット、同じ色集まれ、目かくし散歩、10人の親しい人々などがあります。
  2. アクティビティ
    アクティビティとは、学習活動のことです。ねらいを達成するために学習者が意欲をもって取り組むことのできる活動を設定し、効果的な組み合わせを考えます。
    アクティビティには、ロールプレイング、ディベート、フォトランゲージ、シミュレーション、ランキングなどがあります。
  3. グループ討議
    アクティビティでの気付きなどをグループで話し合います。
    互いの気付きや考えを表現し、共有しながら学習内容を深め、必要に応じて、グループごとに話し合ったことを模造紙等にまとめます。
  4. 発表
    各グループごとに発表します。
    ファシリテーターはそれらを整理したり、発表内容に対する意見を求めたりします。
  5. 振り返り(まとめ)
    学習者は、全体を通して分かったこと、理解が深まったこと、発見したことなどを発表して、学習を振り返ります。
    ファシリテーターは、本学習で大切なことを最後にまとめます。内容によっては、新しい課題を指摘するなどして終わることも考えられます。

(3).アイスブレーキングの例

【仲間探し】

ファシリテーターが提示したテーマをもとに、同じ事柄があてはまる人同士でグループをつくる活動です。テーマは、「生まれた季節」「好きな果物」「好きな動物」「好きなスポーツ」など様々なものが考えられます。学習者の緊張感をほぐすのに効果的な活動です。

【部屋の四隅(4つのコーナー)】

ファシリテーターが提示した課題について、4つの選択肢から自分の考えに最も近いものを選び、選んだ選択肢が貼ってある部屋の四隅に移動し、そのコーナーを選んだ理由を簡単に述べます。4つの選択肢は、「そう思う。」「どちらかと言えばそう思う。」「どちらかと言えばそう思わない。」「そう思わない。」です。課題は、「夏よりも冬の方が好きだ。」「自分は人権感覚をもっていると思う。」「しつけと児童虐待ははっきり違う。」「子どもの権利ばかり言っていると、子どもはきちんと育たない。」など様々なものが考えられます。何でも言える雰囲気づくりを大切にするとともに、自分なりの思いをもって意見や行動として表現できるようにします。

【誕生日チェーン(バースデーライン)】

学習者が相互に誕生日を尋ねながら、誕生日順に列を作って並びます。だれもが一つずつもっている誕生日という情報を交換し合うことで、親近感が沸き、学習者の緊張感をほぐす効果があります。

【名刺作り】

名前や自己紹介の内容などを自由に記した名刺を手作りし、学習者同士で交換しながら自己紹介をします。名刺が仲立ちの役割を果たし、初対面のプレッシャーや緊張感をほぐす効果があります。

【フルーツバスケット】

人数分より一つ少ない椅子を円く置きます。

その場にいる人たちの特徴を指定します。例えば、「眼鏡をかけた人」と言われたら、眼鏡をかけた人はすべて席を変わらなければなりません。ファシリテーターが最初の一つを言ってからは、はみ出した人が次の特徴を指定します。緊張感をほぐす効果があります。

【同じ色集まれ】

学習者に目を閉じてもらい、ファシリテーターは、一人一人の襟首に色付きシールを貼ります。目を開けたら、無言で同じ色同士のグループに分かれさせます。(これにより、次のアクティビティのグルーピングにもなります。)言葉に頼らないコミュニケーションができます。

【目かくし散歩】

二人一組で、一方が目かくしをし、もう一方がリードして、様々なものを手触りで体験してもらいます。目かくしをして歩くことにより、恐怖感や不安感を抱くとともに、協力、信頼、感覚の刺激・豊かさなどに気付くことのできるアイスブレーキングです。

(4)アクティビティの例

【ロールプレイング】

役割演技とも呼ばれ、ある場面に基づいて役割を決め、模擬的に演じることによって学習テーマに迫ったり、その役の立場を共感的に理解したりする手法です。基本的には、台本を用意せずに学習者に活動を委ねます。

【ディベート】

一つのテーマについてルールを決め、「肯定側(賛成派)」と「否定側(反対派)」に分かれて討論を行い、その論理性や表現力等を判定する手法です。グループの人数が同じであること、発言時間が同じであること、発表時間が同じであること、発表順序が肯定側(第1弁論)→否定側(第1弁論)→(作戦タイム)→(中略)→否定側(最終弁論)→肯定側(最終弁論)となることなどのルールがあります。対立する意見を主張し合うことにより、テーマに関するメリットとデメリットを明らかにし、多面的な見方や問題解決能力、情報処理能力を養いながら、テーマに対する認識を深めることができます。

【ブレーンストーミング】

テーマに対して一人一人が思い浮かぶことを自由に出し合い、それらを組み合わせたり、別なアイデアを出したりして、新しい概念を創り出します。その際、出された考えや意見を否定することなく尊重することが大切です。

【フォトランゲージ】

あるテーマに関する写真や絵をもとに、それらの資料から伝わるメッセージを描かれている人の立場から読み取り、今まで自分が気付いていなかった事柄を発見したり、学習者相互の価値観の違いに気付いたりしていく手法です。

【シミュレーション】

擬似体験とも呼ばれ、一定の状況を擬似的に設定して、その中で体験的に行動、活動する方法です。アイマスク体験や車椅子体験、参加者の中に仮の権力関係を設定して多数者と少数者の関係について体験する方法など、様々な疑似体験が考えられます。

【ランキング】

様々なテーマについて、権利や具体的物品名等をカードに記入し、参加者が自分にとって重要と考える順序にランキング(順位付け)して、その根拠等を整理し、結果について参加者相互が意見交換や討議を行います。討議のプロセスでは、一つの結果を導き出すということではなく、自分の考えを整理したり、他者の考えを理解したりすることによって、自分自身の認識を深めることができます

【フィールドワーク】

実際に現地に赴き、歴史的事実や現実から学ぶ活動です。過去の人々の生活や生き方を想像したり、事実を事実として自らの中に取り入れたりすることができる手法です。

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