2.社会教育における人権教育

2.現状と課題

社会教育においては、これまで家庭や学校、地域や職場などあらゆる場において、人権教育・啓発を進めたことにより、人権問題への関心は高まってきています。しかしながら、以下のような課題もあり、まだまだ人権が尊重され、相互に共存しうる豊かな社会には至っていない現状があります。

(1).さらなる人権感覚の育成

現在、人権尊重に関する知的理解を促すための様々な学習機会が提供されており、一定の成果をあげています。しかしながら、学習機会はあるものの、その学習内容が生活に根ざしていない、学習者のニーズに沿っていない、また、学習方法が知識の伝達であったり、マンネリ化したりするなど、学習者が自らの人権意識を振り返り、気付く学習とはなっていない場合も見られます。

また、最近では、新しい手法として参加体験型の学習が取り入れられていますが、そのねらいや活動の意図が不明確であり、まだまだ生活に根ざした人権感覚の育成につながっていないことなどが憂慮されます。

そのため、これからの人権学習においては、単に人権問題を知識として学ぶだけでなく、日常生活において、人権への配慮が態度や行動に現れるような人権感覚を育成することが大切です。

(2).参加者の拡大

地域においては、公民館等社会教育施設を中心に、講座の開設など人権に関する学習機会が提供されています。また、学校教育と社会教育が連携した取組なども報告されています。しかし、住民の自主的な学習意志に基づく研修会とはなっていない場合も見られます。さらに、研修会の参加者に年代や性別の偏りがあったり、学習内容が固定化していたりするなど様々な課題も生じています。

今後は、生涯学習の観点に立って、幼児から高齢者に至るそれぞれのライフステージに応じた様々な人権課題について学習機会を提供し、自主的な学びができるようにすることが求められます。

(3).主体的な学習への参加

これまでの研修会等では、人権問題に対する正しい認識を定着させる機会として知識伝達型の講義形式や、映画やビデオ視聴後の話合いなどを行ってきました。それらの中では、人権問題を自らに関わる問題と感じられず、一般的な知識として受け取り、人権感覚を養うというまでには至らない面がありました。また、受け身的な学習スタイルにより、学習参加者の意欲が減退しているなどの課題も生じてきています。

そこで、県民が主体的・能動的に参加できる学習プログラムを開発することや、手法に参加体験型を導入することなど、県民の学習意欲を高める内容や方法の工夫を図ることが必要です。

(4).指導体制の充実

指導者としては、これまで社会教育主事、社会教育施設関係者、教員、地域の指導者等が中心となり担ってきた経緯があります。しかしながら、指導者の固定化や、新たな人権課題についての認識が十分でないため対応できないという状況も見られます。また、人材や情報のネットワークの共有ができていないことや、指導体制が十分整っていないことから、学習成果が十分に上がっていないという課題もあります。

今後は、指導者の資質の向上を図るとともに、指導体制の見直しと再構築を一層推進していかなければなりません。

(5).多様化する人権課題への対応

ア 人権課題の広がり

今日、国際化、情報化、少子・高齢化などの社会の急激な変化に伴って、女性、子ども、高齢者、障がいのある人、外国人等に関する問題、インターネットによる人権侵害の問題など、人権に関わる新たな問題が生じてきています。

県教育委員会においては、長年、同和問題を重要な柱としてとらえ、県民あげての取組によって、一定の成果をあげてきました。しかしながら、社会の変化によって生じた男女共同参画や子どもの人権については取組の歴史が浅く、課題解決の方策は十分に研究されているとは言えません。

男女共同参画の面から考えると、ドメスティック・バイオレンス(DV)や職場におけるセクシュアル・ハラスメントの問題があります。また、子どもの人権の面から考えると、人間関係の希薄化や地域や家庭の教育力の低下などから、いじめや不登校の問題が深刻化したり、児童虐待や子どもを対象とした凶悪な犯罪が増加したりするなどの問題があります。これらのことから、多様化する人権課題への対応が必要となってきています。

イ 人権課題の複合化

最近、個別の人権課題と他の課題が深い関わりをもつという人権課題の複合化が指摘されています。例えば、同じ家庭の中で、夫が妻に対して暴力をふるうDVの問題とともに、母親が子どもに暴力をふるう児童虐待の問題が同時に起こっている場合があります。

そのため、男女共同参画や子どもの人権という個別の視点から人権課題の解決を図る取組とともに、個人の尊重といった人権一般の普遍的な視点からの取組が求められています。

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