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学習機会の提供

生涯学習の機会については、県および市町村の行政機関や教育関係機関・施設、あるいは、企業や民間団体等の主催する講座や研修が多々提供されている。

しかし、提供の在り方や提供内容が学習者のニーズをどの程度充足しているか、方法や内容の改善等について検討を行う必要がある。

そこで、学習機会の提供について、方法、内容、学習支援体制の整備の3つの観点に類別すると以下のようになる。

学習機会

学習機会

1. 学習の方法面から

(1) 学習機能の活性化

生涯学習社会の確立に向けて、これまで教育行政は生涯学習基盤の整備を図ってきたが、生涯学習の間口が広すぎるためにその内容が必ずしも全ての学習者のニーズに対応しているとは言い難く、身近なところで実際は十分に機能していない。

完全学校週5日制の実施に伴い、今後さらに地域交流の中核施設である公民館等公共施設の果たす役割が大きくなる。そうした地域の公共施設での活動に若年層の興味を引く遊び場や学習機会を設定するなど、今後、点を面に拡げていく努力が重要になる。

また、学習者の意欲を高めるために、学校で実践している『地域のことについて課題を設定し、実地に調査し、その成果をまとめ公表していく』、いわゆる「問題解決的な学習」の手法を生涯学習に活用していくことも考えられる。

(2) 必要に応じた学習者の経費一部負担

大学や民間のカルチャーセンター等の主催事業では、経費の一部負担が当たり前となっているにもかかわらず参加希望者も多く、成果も上がっている。

経費を一部負担することにより学習者は自覚と責任をもって主体的に学習するようになり、学習意欲も継続することができると考えられる。

また、参加者の負担金によってより質の高い講座を維持するとともに、運営費を賄えることで新たな講座の企画も可能となり、学習者の選択肢も拡がると思われる。

このようなことから、高い公共性を有する講座を除いては、材料費等実費ほかの必要に応じた経費一部負担についても県民の理解を得ていく必要がある。

(3) 県民本位の多様な学習機会の提供

勤労者の利便性に配慮した出前講座の実施や生涯スポーツの場の提供、学習意欲をもつ家庭内の要介護者への学習機会の提供、子どもたちと青年が共同して学習する場の提供、あるいは国際的に視野を拡げるための県内在住外国人との交流など、現在の社会状況や学習者の幅広いニーズに応じた学習機会を提供することが必要である。

(4) 男性参加の奨励

講演会や研修会等の各種生涯学習関連事業への勤労者、とりわけ男性の参加が極めて少ない現状がある。これは参加する意志があっても時間的なゆとりのないことが大きな理由のひとつとして考えられるが、男女共同参画社会を実現する上からも、そうした時間的制約を受けがちな勤労男性がゆとりをもって参加できるような学習機会を提供していくことで、もっと男性の参加を奨励していく必要がある。

2. 学習の内容面から

(1) 学習内容の在り方

学習機会提供の場として行政、大学、民間など様々な機関が実施する講座があるが、その内容をより充実したものとするには、期日や内容が県民の学習ニーズに合うよう組織間の情報交換や県民のニーズを知る実態調査などを行い、県民を主体とした講座となるような工夫が必要である。

また、生涯学習の今後のさらなる普及を図る意味から、これまで一般的に行われている座学による講義中心の内容に偏らず、ワークショップなどの体験的参加型学習法を取り入れた内容についても工夫が求められる。

さらには、園芸や食品加工といった農業系講座やパソコン講座など、学習成果を実生活に役立てられる講座が現在においても学校開放講座などの場で一部開講され、成果を上げている。

従って、このような技能を高める学習に、今後積極的に取り組む必要がある。

(2) リカレント教育の推進

趣味や人生を楽しむことを目的とする生涯学習のほかに、自分の生活に生かすための資格取得を目的に学習に取り組むことも、現在の就職困難な社会情勢にあっては重要な意味をもつようになった。

社会の変化に対応できうる能力が求められ、しかもその要求される能力が変化していく中にあって、最も望ましいのは、楽しみながらも資格に関わるような学習の機会が提供される体制が築かれ、そこでの学習成果や取得した資格が評価され、社会の中で活用されることである。

そうした要求を満たすための大学等におけるリカレント教育は益々その重要性を増しており、今後、リカレント教育に代表されるような時代の要請に対応した先見的な学習機会の提供を検討していくことが求められる。

(3) 学習素材の開発

県内で地域に根ざした独創的な活動をしている方々を生涯学習に活用していくことも、新しい学習機会の創出につながる。

また、新たな学習素材の開発という点から、青少年が積極的に生涯学習に取り組む機会を増やすための若者向けの内容を工夫していく中で、郷土の豊かな自然環境や文化的な資源を活用した活動機会を提供することも大切である。

3. 学習支援体制の整備の面から

(1) 学習の充実に向けて

社会のあらゆる場で生涯学習の認識を高めるためには、生涯学習の意義や実態の情報を広く県民に提供するとともに、学習者の多様化する学習ニーズに応えていくための学習環境整備を行うことが重要である。

つまり、多くの学習機会を提供する、学習内容に幅をもたせる、学習情報を手軽に入手できるよう情報提供システムのネットワーク化を進めるなどの様々な工夫を行い、県民が学習意欲を自主的に高めるよう支援する必要がある。

こうした支援体制を築いていくことは、生涯学習の中身をさらに充実することにつながる。

(2) 学習成果の活用

生涯学習社会は、学んだ成果が適切に評価される社会であり、そのためには学習成果をどのように評価に結びつけていくかを考えなくてはならない。

現在、学習成果をそのまま社会的評価と結びつける評価システムが確立されていないことから、学習者の学習意欲の維持・向上や学習成果を生かすという観点からも、生涯学習を通じて学んだ知識や技能を社会に還元できるような評価の在り方を考えていく必要がある。

(3) 施設間連携の推進

学習者により効果的で合理的な学習機会を提供するには、県のもつ生涯学習推進のための機能をより充実させ、県内大学をはじめとする様々な機関・施設との連携をさらに図っていくことが必要である。

また、市町村ではまちづくりの一環として、大学と連携した講座を開設するなどの取組が行われているが、市町村のこのような取組を支援していくことが求められる。

(4) 企業及び学校との連携

これからは行政あるいは学校、民間組織や企業等のそれぞれが情報を共有化し、社会状況や学習者の利便性を考慮した学習機会の提供、例えば官・民が連携した出前講座の実施や休日を利用した講座、少人数制の講座の開設など様々な工夫が求められる。

また、学校においては地域に開かれた学校として、今後とも生涯学習の振興に寄与していくことが求められる。

こうした各機関・組織間の積極的な連携により、官と民の垣根が取り払われ、協力体制や相互支援体制が築かれることで、生涯学習のいっそうの発展が期待できる。

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