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地域学校協働活動推進に係る事例インタビュー

えびの市

~地域と学校・子どもたちが相互に「顔見知り」になることは、地域づくりの原点~


取材日:令和元年9月4日(水)
聞き手:生涯学習課 佐藤、中野       南部教育事務所 鮫島
               回 答:えびの市教育委員会                        
                   学校教育課 主事    中村 美月 さん
                        社会教育課 係長    榎園 よしみ さん
                        地域コーディネーター  瀬口 弘美 さん
                        松元 清子 さん
                        えびの市立飯野小学校 教頭 中村 敏彦 さん
                   文 責:生涯学習課


飯野小学校における地域と連携・協働した活動にはどのようなものがあるでしょうか。

(中村教頭)
 代表的な活動に、6年生の「麓輪太鼓踊り」があります。市内の全ての学校で、ふるさとについて学ぶ「えびの学」に取り組んでいますが、本校ではこの輪太鼓踊りを位置付け、保存会の方々に歴史から教えていただき、運動会を発表の場としています。今年で12年目の取組となりました。子どもたちは「6年生になったら踊るんだ」という気持ちになっています。
 5年生は、小・中・高一貫教育の取組でもある田植えと昔ながらの方法での稲刈りをしており、飯野高校の高校生、JAえびの、飯野まちづくり協議会の方々と一緒に取り組みます。また、4年生は校区の水路の学習、3年生は市内にある金松法然神社や菅原神社の牛越祭りなどの地域の学習、2年生は学校周辺のまち探検、1年生は昔の遊びや芋植えなど、それぞれの学年で地域の皆様の支援をいただいています。

これらの活動はすべて教育課程に組み込まれているのでしょうか。

(中村教頭)
 はい、すべて教育課程に位置付けています。飯野高校との連携も本校の大きな特色です。今年の6年生のミシンの学習は、飯野高校で行うことにしました。飯野高校の生徒は、地域貢献活動、支援活動で毎週小学校に来てくれるので、とても身近な存在です。

地域と連携・協働した活動を行う上で、どのような工夫をしていますか。

(中村教頭)
 校務分掌に学校支援地域本部事業の担当者を位置付けており、本校担当の瀬口コーディネーターとの連絡窓口になっています。具体的な計画は各学年で行います。コーディネーターの存在は非常に大きく、本校の学校運営協議会の委員にもなっていただいているので、学校経営ビジョンも分かってくださっています。

地域学校協働活動は目的や目標を共有して、そのもとで活動をしていくことを目指しています。麓輪太鼓の取組などは、地域の願いでもあるのではないでしょうか。

えびの市

(中村教頭)
 まさに、その通りです。高齢化や地域離れによって、担い手が不足しています。保存会の方からすれば、ただ教えるだけでなく、地域を愛する子どもたちが育ってほしいと思っていますし、地元を一度は離れたとしても、後に戻ってきて麓輪太鼓踊りの担い手になってほしいという願いをもっています。実は、今年21歳になる学生が、輪太鼓踊りの継承に取り組んでくれることになったそうです。ちょうど取り組み始めてから12年間で、その成果が出始めたということではないでしょうか。

【麓輪太鼓踊り保存会に入ることを決めた大野さんへのインタビュー】

※ 現在、大学3年生。麓輪太鼓踊りを教える側として、運動会前の小学校6年生に指導中。

○ 大野さんが6年生のときには、どんな気持ちで踊っていましたか。
 私が6年生のときが、輪太鼓踊りの取組が始まって2年目だったと思います。輪太鼓踊りについてきちんと学習した後に踊りましたが、自分にとっては覚えやすいリズムでしたし、後輩たちにも残していきたいと思っていました。

○ そのときも、保存会の皆さんは、今と同じメンバーでしたか。
  はい、多くの方は同じメンバーでした。

○ 保存会の皆さんの思いは、小学生の頃の大野さんに伝わっていましたか。
  小学生でしたので、間違えることもあり、自信がなかったのですが、「間違えてもいいから思いっきりやってくれ」と言われたのを覚えています。熱い思いは伝わっていました。

○ その保存会の方々の思いは、今でも変わっていないのでしょうか。
  変わっていません。さらに熱くなっているように思います。

○ 今、久しぶりに踊ってみてどうでしたか。
  久しぶりでしたが、リズムなどは覚えていて、楽しいと思いました。

○ OBとして、教える側として、どんな思いでいますか。
  楽しんでもらうのが一番だと思います。楽しんでもらって、さらに下の代につないでほしいです。保存会に若い人にも入ってほしいので、同級生も誘いたいと思っています。


地域の方々と連携・協働することによって、どんな効果を感じていますか。

(中村教頭)
 子どもたちにとっては、ふるさとを知るということが最も大きいと思っています。例えば米作りでは、地域の苦労や課題も知ることができるし、市の産業文化祭へ米を出品することによって地域のイベントにも貢献することができます。また、近くにおじいちゃん、おばあちゃんがいないという子どもも多いので、低学年にとってはとても貴重な機会になっています。高齢者の方々にとっても、地域のつながりがなくなってきている今、子どもと触れ合うことが元気や生きがいにつながります。

地域の方々が学校に来られることについての先生方の意識はどうでしょうか。

(中村教頭)
 本校では、開かれた学校づくりを学校経営の柱にしていますし、これまでの蓄積もありますので、地域の方が学校に来られることは当たり前になっています。これまでの蓄積はありますが、PDCAサイクルによって毎年の取組を見直し、改善していくことが課題であると言えます。

学校の思いや地域の方々の願いを互いに話し合える場はあるのでしょうか。

(中村教頭)
 そこが次のステップアップとして必要なことだと思っています。すばらしい取組はたくさんありますが、それぞれの活動になっているので、例えばまちづくり協議会の話合いに学校も参加させていただいて、話し合えたらと思っています。顔が見える有機的なつながりをつくって、目標を共有しながら取り組んでいきたいです。

「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、どのように考えていますか。

(中村教頭)
 今の取組をもとに、より教科を越えて横断的な取組となるように見直したり、深い学びにつなげたりといったカリキュラム・マネジメントに取り組みたいと思っています。えびの市ではコミュニティ・スクールを早くから導入していますので、学校運営協議会委員の方と目標の共有はできますが、そこからの広がりという面では課題があります。

学校と地域との連携・協働について、教育委員会としてはどのような方針で取り組んでいますか。

(榎園係長)
 「地域の子どもは地域で育てよう」を合言葉に、優れた技能や専門性をもった地域人材を積極的に活用しています。コーディネーターを通して行う活動も多くありますが、伝統行事や毎年恒例となっている行事などでは、学校が直接まちづくり協議会やボランティアの方とやり取りすることもあります。定着している活動としては、平和学習や史跡めぐり、地層学習などがあります。

えびの市の学校を支援する体制の概要を教えてください。

えびの市

(榎園係長)
 平成20年度に、教職員の負担軽減と地域の教育力向上を目指して、市内4地区で本部を立ち上げました。当初は、支援内容が限られていたり、ボランティアと学校の思いが一致しなかったりといった課題もあったようですが、軌道に乗せることができました。現在は、年度初めにコーディネーターが学校別の資料を作成して各学校を訪問し、支援の流れを説明したり、ボランティア研修会を行ったりしています。また、ボランティアだよりも発行しています。



これから先は、どのような見通しをもっていますか。

(榎園係長)
 今の4本部を継続しつつ、支援の幅と支援の輪を広げていきたいと考えています。子どもたちや保護者の方にも、地域の方に御協力いただいている支援活動をPRできたら、次の世代にもつながるのではないかと思い描いています。よりよい活動にしていくためには、先生方に支援してほしいことを言ってもらえるのが一番ではないかと思っています。

コーディネーターのお二人が心がけていることは、どんなことですか。

(瀬口コーディネーター)
 同じ取組でも、先生が替わると思いが異なることもあるので、事前打合せのときには、先生たちの思いを酌めるようにと心がけています。学校運営協議会の委員もしていますが、それでも学校側の思いを十分に酌み取れないことはあります。また、早めの計画、早めのボランティアの手配も心がけています。人材の発掘は社会教育課に依頼することもあります。

(松元コーディネーター)
 身近な地域の人との関わり、つながりができるようにと心がけています。コーディネーターが替わっても、先生が替わっても、持続できるような仕組みができるとよいと思います。先生のニーズをしっかりと把握すること、そのためにも発信の工夫をしていきたいです。

えびの市では、コミュニティ・スクールを早くから導入していますが、現状はいかがでしょうか。

(中村主事)
 導入して8年目になります。年に3回程度、各学校で協議会を開いていますが、やや硬直化している現状も見られましたので、昨年度は学校教育課がいくつかの学校の第1回協議会に出席させてもらいました。そこで、熟議について紹介したのですが、例えば飯野小学校では登下校の安全についてとても活発な話合いが行われました。本年度は、県の教育研修センターに依頼して、7月に学校運営協議会委員の全体研修会を行いました。そこで学校運営協議会について改めて確認し、事例の紹介も行いました。他校の話も聞くことができて有意義な会になったと思います。

学校が地域と連携・協働することのよさとして、どのようなことを感じていますか。

(中村主事)
 えびの市内でも、子どもが減ってきていますので、例えば登下校でも心配が増えています。そんなことからも、まず、地域の方を知るということが大事だと思います。様々な活動で学校に来てくださっていれば、子どもたちも先生方も地域の方を知ることができます。また、「えびの学」の取組などを通して、子どもたちも先生方もえびのの歴史や伝統を知ることができます。私もえびの出身ですが、子どもたちに地元のことを知ってほしいという思いがあります。
 今までの取組から、先生方も地域の方にお願いしやすい関係ができてきていると思っています。学校運営協議会の場でも学校から委員に対して「誰かに頼めませんか」とお願いしていたり、逆に委員の方から学校に「先生も忙しいから地域をもっと頼ってほしい」と伝えていたりしています。

(榎園係長)
 あるボランティアの方が「子どもと顔見知りになっておかないと声もかけられない」と話していました。顔を知って話ができる関係になっておくと、地域でも声をかけることができます。また、子どもとふれあうことで元気をもらえるという声も聞きます。そんな相乗効果があるのではないかと思います。

(松元コーディネーター)
 子どもと関わることで、ボランティアの方が元気になります。「楽しかった、ありがとう。」と逆にお礼を言われることもありますし、涙を流す方までいらっしゃいます。

(瀬口コーディネーター)
 ボランティアの方にとっては、自分ができることを生かせる喜びがあります。また、地域の防犯・安全面から見ても、子どもと顔見知りになっておくことはとても大切なことだと思います。

課題としては、どのようなことを感じていますか。

えびの市

(榎園係長)
  まちづくり協議会、学校を支援している本部、他の団体も含めてそれぞれの活動が「点」であるものを、どうやって「線」としてつなげていくかということは、これからの課題だと思います。
 例えば、子どもの登校時の見守りにしても、いろいろな団体の方々が活動していますが、何曜日にどの団体が活動しているのかをなかなか把握できていません。そこを結び付けるのはどこかということです。

(松元コーディネーター)
 偏りがないように、バランスよく、うまくやっていくにはどうしたらいいのか、整理できるとよいと思います。それぞれがいい活動をしているので、つなぐことができたらと思います。

(榎園係長)
 つなぐためには起点が必要なのですが、どこが起点になるかというところが課題です。


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~地域と学校・子どもたちが相互に「顔見知り」になることは、地域づくりの原点~
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