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地域学校協働活動推進に係る事例インタビュー

川南町

~未来の川南のために、みんなで教育を楽しんでいきたい~


取材日:令和元年8月28日(水)
聞き手:生涯学習課 佐藤、中野    中部教育事務所 根井    教育研修センター 前村
               回 答:川南町教育委員会教育課                         
                   課長補佐  押川 明雄 さん     教育対策監 肝付 正籍 さん
                        主 査   河野 幾久子 さん      主任主事  楠本 さき さん
                        地域学校協働活動推進員   平塚 金治 さん   黒木 義惠 さん
                                放課後子供教室コーディネーター      内藤 あゆみ さん

                   川南町立国光原中学校        教 諭   下沖 洋徳 さん
                   文 責:生涯学習課


川南町では本年度から平塚さん、黒木さんを地域学校協働活動推進員として委嘱されました。また学校運営協議会制度も導入(コミュニティ・スクール)されましたが、これらの経緯や手続きについて教えてください。

(平塚推進員)
 川南町では、従来の学校支援地域本部のときから1つの本部で町内7校を束ね、私一人がコーディネーターとして活動してきました。そこへコミュニティ・スクールを2中学校区で導入することが決まったので、推進員を2人体制として、それぞれの学校運営協議会に委員として入ることになりました。

(肝付対策監)
 学校運営協議会を導入する際に、地域学校協働本部と両輪で進めていくことを考えました。これまで2つの中学校区で学校関係者評価委員会を設置していたこともあり、学校運営協議会も2つの中学校区で導入することになりました。その際に、地域学校協働活動を推進するために、推進員を2人にして、それぞれ委員として入ってもらうようにしました。
 教育課内での会議で方向性を検討し、定例教育委員会を経て、今年度導入となりました。

(押川補佐)
 地域学校協働活動推進員の設置規則については、前年度の年明けにはできています。その以前から協議し、準備を進めていました。

地域学校協働本部としての体制づくりの面では、どのような準備をされましたか。

(平塚推進員)
 これまでの学校支援との違いに留意しました。これまでは地域が学校を支援する一方向の関係でしたが、双方向の関係にしていくには地域の意見を聞いていく必要があります。コミュニティ・スクールとの関係を考え、放課後子供教室も含めて、まずは教育課内の役割分担をきちんとすることを考えました。

今後も中学校区の学校運営協議会、推進員も2名体制で考えていますか。

(肝付対策監)
 小学校区ごとのコミュニティもあるので、各学校に設置するのが理想なのかもしれません。しかし、小規模校化も進んでいますし、推進員7名という人材を発掘するのもなかなか難しいので、まだ手探りではありますが、2中学校区での設置が現実的ではないかと考えています。

放課後子供教室の活動プログラムを計画する上で心がけていることや工夫していることはどんなところでしょうか。

(楠本主任主事)
 私は、月1回土曜日に実施している「元気っ子サークル」の担当をしています。「元気っ子サークル」は、子どもたちをリーダーとして育てていくことを目的としているので、どうしたら子どもたちのリーダーとしての資質を高めることができるかと考えながらプログラムを計画しています。本年度は老人ホームと保育所訪問を考えています。中学生を対象としたジュニアリーダーが今は少ないので、今のサークルの子どもたちがジュニアリーダーとして育ってくれるようにと、つなぎを意識しています。

平日の放課後子供教室についてはいかがでしょうか。

(内藤コーディネーター)
 コーディネーターになって今年7年目になります。今年は新しく「グリーン隊」という名をつけて地域の清掃活動を始めました。子どもたちは喜んで参加します。そこに地域へ還元をしたいという「山茶花ふれあい学園」(以前の地域学園)の皆さんが一緒に活動してくださって、雑巾の絞り方や畳の拭き方などを教えてくれています。この方々は、読み聞かせ、紙芝居の他、将棋、ダンスも各小学校の体育館で教えてくださっています。
 また、平塚推進員から紹介いただいた方にお願いして「めざせ将棋名人」という将棋教室も始めました。今、将棋が子どもたちの間で流行しています。いずれは、長期休業を使って大会も開こうと思っています。

山茶花ふれあい学園の方々はどのくらいの人数がいるのでしょうか。

(平塚推進員)
 30名ほどです。この方々は教育にも熱心で、目標をもっていらっしゃいます。以前に学園生の皆さんで学校の授業を参観させていただいたことがありました。家庭科の運針の授業でしたが、担任一人での指導は大変なことが分かり、見かねた学園生の方がサッと児童の中に入っていかれ指導をされました。
 参観後、ミシンの指導はもっと大変だろうと、ミシンが得意な方に支援指導をしていただきました。学校は大変助かり、予定の時間内に作品を完成することができました。今では、町内全校の小学校から依頼が来るようになりました。そこで、本年度からは、新しいミシンの使い方を専門家に指導してもらう講座を設定し、支援者の育成をしています。学園生は、学校支援活動にとって、大変貴重な存在です。

川南町の放課後子供教室はとてもアイディア豊富だと感じますが、どのようなお考えでプログラムを計画しているのでしょうか。

(内藤コーディネーター)
 コーディネーターになったとき、ちょうど自分にも放課後子供教室の対象になる年齢の子どもがいました。母親として何を学ばせたいのか、何を身に付けさせたいのかが根底にあります。子どもたちに川南のことをよく知ってほしいという思いももっています。

これらの計画を立てていくにあたって、推進員のお二人との連携もあるのでしょうか。

(平塚推進員)
 老人ホーム訪問では、小学校で福祉体験学習のことを伝え、通所型の施設を紹介しました。保育所訪問については、どんな遊びをすればよいのかを考えさせ、リーダーとして大切なことも事前に学習させてから臨もうと打ち合わせています。遊びの道具の準備も私たち推進員が支援します。

(楠本主任主事)
 打ち合わせたことをもとに、保育所訪問の活動に入る前に1時間ほど時間を取って、子どもたちの事前学習に当てようと考えています。

(平塚推進員)
 月に1回開いている協働活動のネットワーク会議の中で、このようなことを話題にして話し合っています。

協働本部のハンドブックの内容が充実しており、特色の一つとして役場の各課が学校・子どもに対してできることを掲載されています。役場内での各課との連携はどのようにされているのでしょうか。

川南町

(押川補佐)
 定期的に集まるようなことはしていません。子どもたちに向けて講話等をすることが各課の業務の目的の達成につながりますし、このハンドブックにまとめておくことで各部署の取組を知ってもらえるメリットもあります。教育課と各課がそれぞれの目的を明確にし、共有していくことで連携が取れています。学校支援だけを目的にして教育課が各課に一方的にお願いをする形だと、持続できなくなってしまいます。メリットがないと負担感が生じます。

(平塚推進員)
 例えば、中学校でのキャリア教育の取組で様々な職業を紹介したいときには、産業推進課にお願いすると派遣してもらえます。個別にお願いにする必要がなくとても助かっています。すべての課が学校に対して何ができるかを示してくれており、学校もそれを分かっています。今後は、地域との結び付きをもっとつくっていきたいと思っています。


ハンドブックには、自治公民館を基盤とした学校支援についても記載がありますが、どのような取組でしょうか。

(平塚推進員)
 登下校の安全指導、見守りについては自治公民館がまとめてくれています。中学校の部活動終了後の巡回に行ってくださるところもあります。自治公民館ごとに青パトも配置されているので、活用して巡回しています。見守り後、学校のボランティアルームに集まって地域の方々が話し合っている時間もとてもよいことだと思っています。

国光原中学校で地域と連携・協働した特色のある取組には、どのようなものがあるでしょうか。

(下沖教諭)
 本町では口蹄疫がありました。毎年、7月1日に近い日に合わせてメモリアルセンターでの見学や講話を「リ・ボーンデー」として計画しており、本校ならではの取組と言えます。講話は、農家、獣医師、行政それぞれの立場から話を聞けるよう、毎年順番にお願いしています。町のことを知る大事な機会だと思っています。
 また、年に2回、多様な職種の方にお越しいただき、生徒たちが話を聞くことができる「ドリカム講話」も行っており、将来を考える上でよい機会となっています。
 学年ごとの取組としては、1年生は通山地区自治会の婦人部の協力をいただいて「ふるさと料理教室」を行っていますが、今では自治会が予算化してくださっており、すべて準備をしてくださっています。2年生は地域の事業所に出向いての職場体験をしていますが、今後は唐瀬原中と同じ日程で実施できたらと思っています。3年生は入試前の面接練習として、地域参画型面接があります。さらに、小中合同での取組として、クリーン作戦という清掃活動に取り組んでいます。
 教育課程外では、「国中ファーマーズ」という農業大学校と連携した取組もあります。苗植え、収穫、出荷、軽トラ市での販売までを体験できるプログラムになっています。

様々なことに取り組んでおられますが、地域の方と連携・協働する効果として、どのようなことを感じていますか。

(下沖教諭)
 どの活動でも、子どもたちが伸び伸びと参加しています。教室とは違う表情を見せる生徒も多くいますし、先生方もとても楽しみにしています。3年生の面接に参加した地域の方からは、子どもたちの声を聞くことができるよい機会だと聞いています。本校は、地域の方との距離が近い学校だと思っています。

(平塚推進員)
 面接に参加した方の話を聞くと、子どもたちを何とかしたいという強い気持ちをもっているのを感じます。子どもたちからも「面接練習を地域の方にしていただいてよかった」という声を聞いています。自分の進路のことを、親だけでなく、地域の人も考えてくれているということを感じ取っているようです。

先生方にとって、地域学校協働活動推進員はどのような存在でしょうか。

(下沖教諭)
 行事のたびに頻繁に連絡を取っており、様々な活動での講師の人選は平塚推進員にお願いしています。学校側がお願いすることが多いので、とても助かっています。

「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた展望を聞かせてください。

(下沖教諭)
 子どもたちが地域に出て貢献できる活動を考えていきたいと思っています。子どもたちは地域の活力源ですので、その元気を伝える活動をしたいです。また、もっと多様な方々とのつながりの輪を広げて、地域の方に甘えられるところは甘えることで、働き方改革にもつながるのではないかと思います。

(肝付対策監)
 コミュニティ・スクールと協働本部とでうまく連携を取り、熟議もしながら、互いに教育を楽しんでいきたいと思っています。いろいろな方とつながることで、これまでと違う教育活動に取り組める楽しさがありますし、地域の方のやりがいも生まれます。川南町が元気になる教育をしていきたいですね。

推進員のお二人にお聞きします。コーディネート役として心がけていることは何でしょうか。

(平塚推進員)
 未来の川南がどんな姿であるべきか、そのためにどんな子どもたちを育てたいのか、学校では何を指導していけばよいのか、地域ではどうしたらよいのか、学校と地域が共通の目標をもつことが大事です。そのもとに、地域・家庭・学校・行政の役割があり、みんなで育てていくこと、それが協働活動であると思っています。今後は、未来の川南をみんなで創っていく組織づくりを考えていかなければなりません。

川南町

(黒木推進員)
 私は今年から推進員になりましたが、まずは人を知ることを心がけています。様々なところに顔を出すようにしており、そこで地域おこし協力隊の方や県外から移住した方を知って、どこにどんな方がいるのか情報を得ています。人を知ることから新たな連携が生まれることがあり、そのつながりの中から支援できることが生まれてくるのを感じています。


今後やろうと思っていることはありますか。

(黒木推進員)
 各学校の活動報告から、過去3~4年分の各学校の活動内容や実施時期等をまとめているところです。これを各学校に渡せるようにして、活用してもらおうと考えています。

(平塚推進員)
 各学校の教務主任に依頼して、学校暦に記号をつけておいてもらえると、「この行事では支援をお願いする」ということが学校にとっても、私たち推進員にとっても分かりやすくなります。人が入れ替わっても継続できる仕組みづくりにつながればと思っています。
 また、ボランティアの心構えをまとめたボランティアハンドブックを作成すると、学校に行きやすくなると思っています。

課題としてはどのようなことがあるでしょうか。

(平塚推進員)
 人材バンクをつくっていますが、個人情報の関係から教育委員会で保管しています。これをどう活用してもらうのか、また、多くの支援者を準備してはいますが、依頼に偏りがあるのも難しいところです。
 また、学校が地域の方にすべてを任せてしまわないようにするための工夫も必要です。私たちも学校が何をしたいのか、目的を十分に知っておかないと人の紹介はできません。

(押川補佐)
 地域の立場、保護者の立場として言えば、地区によっては子ども会が存続できなくなるなど、地域の横のネットワークがなくなってきているのが現状です。地区内で連絡を取るのも、文書を配るのも難しくなっています。地域のネットワークの再構築をする必要があると思います。

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