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県立図書館についてのヒアリング

村岡 浩司 氏

村岡 浩司 氏

※ 有限会社一平 代表取締役

ヒアリング日 平成29年1月23日
  聞き手 清家(生涯学習課)・大木(県立図書館)
  文責 生涯学習課



個人的な図書館利用について

  • いつも何かしら本を持ち歩いている。事業家なので、興味があるのは少しビジネスに関連すること、起業家の頭の中を覗くような内容のものが好き。今ではハウツーものはあまり読まない。
    本は自分で買っている。人と話していて紹介されたり、SNSで信頼する人が本を薦めていたりするとネットや本屋で購入する。
  • 学生のときは、図書館にはよく行っていた。最近の図書館は利用する動機が分かれている気がする。本を借りに行くとワクワクしていた。学校の図書館も面白かった。小学校の時から使っていて、友達同士で出かける場所のひとつでもあった。
  • 88年からアメリカ(コロラド州 グランドジャンクション)に2年ほど滞在し、地域のコミュニティに開放している学校附属の図書館を利用したが、飲み物などを持ち込んだり、庭で読んだりすることもできて、居心地が良かった。それと比べると日本の図書館は窮屈な気がする。

武雄市の図書館について

  • 武雄市立図書館には3回ほど訪ねたが、大きなチャレンジであり、良くも悪くも面白い。あそこは図書館ではなく、本屋。悪い意味では図書館の定義は崩れている。今までの概念からすると、全く異質なもので、意見は分かれると思う。しかし、良い面では、「行きたい」「長く過ごしたい」と思ったときや、「買いたい」と思ったときに、新しい情報である新刊がすぐ手に入ったり、カフェでゆっくり過ごすこともできるなど、その選択肢がある、行くモチベーションが2つ3つ重なっている。

ブックス&カフェについて

  • アメリカの本屋は90年代から本が売れなくなり生き延びるためにカフェと一体化している。カフェから飲み物を持ってきて、本屋の中のたくさんあるソファの一つに身を沈め、本を読みながら時間を過ごすことができる。知的好奇心を満たして、物理的に本を買えない人もそこで学べるし、もっと深く知りたい人、検索したい人も行く。カフェがあり、食事もとることができて長時間滞在できる、という利便性もこれからは求められるだろう。日本の本屋も今図書館のようになってきている。ブックス&カフェはこれからもっと増えていくだろう。
  • 残念ながら図書館の近くに大きなブックス&カフェができれば、ほとんどの人は図書館に行かずにそちらに行くと思う。今後は図書館もカフェと融合させるとかTSUTAYA的な方向に行かざるを得ないと思う。

図書館は来てもらいたいのか・所属してもらいたいのか

  • 歌手はCDを買ってほしいと言うが、テレビやYouTubeでも聞けるなど、今はただで情報を受け取れる。一方で、物質的なものはお金を払って買うという時代だ。
  • 図書館は無料で情報を提供するというビジネスモデルを昔から行っている。であれば情報はもっと開放してもいいと思っている。例えば所属するということでいえば企業としては、県立図書館の会員登録をするとデータベースが自分のパソコンからアクセスできる。それなら喜んで県立図書館の会員になるだろう。
  • 宮崎県立図書館に興味を持った学生や起業家とか、様々な人が「所属」することに踏み込むと、変化が起こるのではないか。
  • 図書館利用者というためにはカード発行がなくてもネットで会員登録するなど、帰属する何かがあれば良い。ビブリオバトルで選ばれた本の情報が送られてくるとか、専門の司書がチェックした本の情報を毎月100冊くらい何百文字かに集約されて届くとか。(全日空の機内誌は購読申込みを行うと有料で毎月送ってくる。読んでみたいと思う。)
  • CDが売れなくなっている世界の傾向の中でも日本では売れるなど、日本人は自分が気に入ったものは対価を払っても「手元に置いておく」ということをするが、図書館は来てもらいたいのか、所属してもらいたいのか、というところから考えると面白いのではないか。その上で今までと同じ、一本芯の通った図書館をつくるという決断をして、「来てもらう」事から、例えばインターネット空間で面白いサービスを受けられるという「所属」してもらう、ということに転換すると、知的にも面白いと思う。
  • ワトソン(Watson)※みたいな、言語認知システムで解析し自分の趣味嗜好が分かるサービス、そういう、ブックス&カフェとも異なるもう一歩先の進化形のものを図書館がするといい。(いやな人は会員にならなければいいわけだから。)

 ※ ワトソン(Watson) IBMが開発した質問応答システム。AI(人工知能)の一種。

「かけ算」の図書館運営について

  • 変化が激しい中、維持コストをどう賄うかということも、これからコミュニティの課題になる。
    人が来て動いて、家賃収入がとれ、ということであればサステナブルなやり方があるかもしれないが、だんだんTSUTAYA的なブックス&カフェが増えて図書館の代わりになり、図書館は人の来ない施設になっていくと、その図書館自体存続する意義があるのか、となる可能性もある。「図書館」「本」だけを断片的に切り取るとそうなるかもしれない。
  • 全国では2014年で477校、2015年で520校の学校が廃校になっている。合計997校の内訳は小学校692校、中学校216校、高校66校、特別支援学校は23校らしい。今後無くなる可能性があるのは図書館だけではないという前提で考えると、人々が情報を得る手段は多様化せざるを得ない時代かと思う。
  • 機能のかけ算をしなければいけないのではないか。基山町のフューチャーセンターラボに行ってきたが、そこには本棚があった。それだけではやっていけないので、他に花屋さんやカフェを開くなど、小さなコミュニティビジネスをしており、素敵なスペースだった。公民館がコミュニティスペースとして単独で存在していた時代から、そこに小さな図書館を、街中でやっていたようなインキュベーションみたいな起業支援や、空き店舗対策のような要素も一年契約で組み合わせていくという掛け合わせをする。図書館だけが単独機能で生き残っていく時代ではないという気がする。
  • まだ行政は、子育て支援施設、市役所など、行政の考える枠組みだけのかけ算になりがちで、そこに民間が入っていくことに抵抗があるのではないか。今はグローバルに見れば、民間事業者と連携しながら作り上げる流れになっているが、日本人は定義づけをしないと落ち着かないのでその転換が難しい。であれば、行政が逆に民間にはできないとんがったサービス、無料の情報というところにぐっと踏み込むのも面白いだろう。図書館はもともと情報を無料で提供する先駆者なのに、そこから情報を外に持ち出すことに制限があり、図書館に来なければアクセスできない。
  • 東京・丸の内の「3×3 Lab Future」※は、一つの空間を三菱地所という企業が整備している。そこに行政が提言をしてそこに逆に参画する、あるいは行政にスペースを買ってもらう、どちらも一緒だと思う。行政が作った空間を切り売りすることも、民間がつくった空間を行政が一部買うこともお客さんからすれば一緒だ。
  • 図書館に行くときにもっと楽しい空間があればモチベーションが上がる。単に武雄になるのが正しいとは思わないが、そこに宮崎らしいキャラクターみたいなものを定義していく作業は図書館の専門家だけで決めるのも違う気がする。今までの延長線ではなく、学生や主婦、自分みたいな事業家など、多様な人がいると面白い。
  • 例えば今自分がコミュニティをつくろうと、廃校になった小学校をリノベーションをしているが、そこに図書館を作ろうというプロジェクトを行政と一緒にやってもいい。本棚3つでもいい。民間だけで運営する中に行政の、図書館を研究している人が入るから面白い。やることは実験のような事であってもいい。図書館の無いところで同じような事ができるかもしれない。これも一つの方向性だ。行政だけで図書館をつくるというのは通用しない時代になっているかもしれない。

※ 3×3 Lab Future(さんさん ラボ フューチャー):三菱地所株式会社が2016年3月に大手門タワー・JXビル1階にオープンしたビジネスの交流拠点。「3×3 Lab Future」はサステナビリティの3要素である「経済」「社会」「環境」がギアのように噛み合い、さらに自宅でも会社でもない第3の場所「サードプレイス」として業種業態の垣根を越えた交流・活動拠点として、次世代の持続可能な社会の実現に寄与する場所を意味している。

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村岡 浩司氏(有限会社一平 代表取締役)H29.1.23  (PDFファイル 200 KB)
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